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2017-12-18

ことばの前の

久しぶりの投稿となりました。
アトリエをお借りしている古民家には、すきま風がきびしい冬ですが、
Sunoiroクラスもコドモクラスも、みんな元気に通っています。
アトリエは建物の一番奥にあるので、戸を締め切るこの季節は玄関からアトリエまで6枚の戸を開けて向かいます。
「めいろだなーこりゃ」というみんなの声を聞くのがこの季節の定番になりそうです。

今日はじょうくんのお話を。
約半年前からSunoiroクラスに参加しているじょうくん。
じょう君はリラックス上手。アトリエの床に寝っ転がって絵を描いたり、ソファで本を眺めたり、リビングのようにして過ごしています。
そんなじょう君の最近の制作スタイルは、気になる本をひっぱりだしてきて、それを読んでもらいながら描くというもの。
アトリエの本棚の片隅に、「食」にまつわるエッセイ本のコーナーがあるのですが、じょう君は絵本でもなく、雑誌でもなく、画集でもなく、なぜか毎回その食の本コーナーから本を選ぶのです。背表紙がとりわけ目立つわけでもなくむしろ地味なのですけれど、、鼻がきくのでしょうか。
その本を私に渡して、じょうくんが「ここ」というページを私が読む。すると「うん」と力強くうなずいて筆を走らせる。一筆終わると、ページをめくり再び「ここ」というページを私が読む。描く。読む。描く。というなんとも独特の制作スタイルができあがっています。
食にまつわる本ばかりなので、雨の日に作る干物の話やあさりの酒蒸しのレシピ、オクラの効用やお弁当の記録etc,,,なんとも興味をそそられる美味しそうな文章ばかりです。「おいしそうだね」「うん」(うなずく)「なに食べたい?」「ここ」(指差す)という会話で盛り上がりながら1枚の絵ができあがっていきます。

多くの言葉がでないじょうくんにとって制作の時間は会話そのものなのだなと思います。
本を選ぶこと、その本の読んでもらいたいページを指すこと、静かにゆっくり聞くということ、納得し、色を選び筆を走らせるということ。それを繰り返すということ。
その流れの中に、じょうくんと私との間で静かな会話がされていることに気づきます。
指をさす、聞く、目を見合わせてうなずきあう、触れる、ほほえみあう、繰り返す。
お互いを信頼しているから。
それは赤ちゃんと会話をしている感覚に近いのかなと思います。
ことばの前の、静かで、穏やで、確かなコミュニケーションをじょうくんが教えてくれます。

 

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