はたらく場と
風にそよぐ黄金色の田んぼに、たくさんの真っ赤な彼岸花が見られる季節となりました。
みなさんお変わりありませんか?アトリエに通うみんなも元気です。
先日、島根県益田市と東京都渋谷区に拠点を置くデザイン会社、益田工房さんを訪ねてきました。少し緊張しながらアトリエの作品2点を持って。
この4年間ひそかに、アトリエのダウン症の人たちの作品が、ホテルやオフィスや病院にあったらいいなあと思いをあたためてきました。そしてその場所はアトリエのある浜田市を中心に、通っている人たちの住む町や、つながる土地でありたいと。
アトリエでの彼らは、描きたいという強い欲望や、描かなきゃという焦燥とは無縁です。紙と絵の具があるな、じゃあ描こうかなというなんとも健康的な素の姿で制作をしています。そうした余白を持って、リラックスしている中から生まれた作品が、町に暮らす人が憩う場、はたらく場、ケアされる場にそっと寄り添うようにあるのが自然なあり方だと感じてきました。
作品と空間とが互いに響きあえるのを思い描いていたところ、益田工房の洪さんと出会い、はじめの一歩でご相談をしたらば、作品を見にアトリエまで来て下さり、とんとんと決まったのが今回持っていった2点の作品です。それは偶然にも益田市から通っているじょうさんの作品でした。
じょうさんはダウン症ではありませんが、朗らかで大らかな性質と、本質をつく鋭さとがあり、言葉ではないコミュニケーションの中で大事な気持ちを共有しながら制作をしています。彼が暮らす町のデザイン会社に作品がある光景。それは小さな一歩ですが、光のようにたしかな感覚でした。
オフィスのある2階のドアを開けると、小さなギャラリーのような空間があります。今回はその壁に展示させていただきました。ギャラリースペースとオフィスは壁一枚を隔ててつながっていて、アーチ型の大きな窓の向こうに撮影スペースが見えます。天井が高いオフィスは工場のようで、ここで人と思いと素材とが交わって、結晶のようなデザインが生まれているのですね。
デザインのお仕事に携わる方たち、このスペースに足を運ばれる方たちの、ふっとした瞬間に、目や心にとまり、寄り添えますようにと願いながら過ごしたひと時でした。
展示の機会を下さった益田工房の洪さん、お仕事の手をとめて展示をお手伝いして下さった八谷さん、スタッフのみなさん、どうもありがとうございました。
photo: yatagai yoshiyuki
益田工房: https://masudakohboh.com/