寒いような、暖かいような、ゆらぐ12月、みなさまそれぞれの場所でお元気でお過ごしでしょうか。今井美術館での「Atelier Sunoiroー9つの素の色」この秋、1ヶ月の会期を無事に終えることができました。たくさんの方にお越しいただき、遠くから、近くから、お気持ちを寄せていただきました。こころより感謝申しげます。展示が終わって1ヶ月の月日が経ち、ようやく落ちついて綴ることができました。お越しくださった方には、思い出す時間に、お気持ちを寄せてくださった方には、少しの間、旅する時となれたらうれしいです。
展示前日のアトリエ、大切な2つのカードも一緒に会場に置くことにしました。
「ひかりがあふれるようね」フランス在住の画家の方が残して下さったことば。
かずくんのギターとSMAP3部作、じょうたろうさん、あやのさんの絵。調和。
アトリエではいつもこどもたちが遊んでいるギターもここではかしこまって。
詩のようなかずくんのことば。
絵の後はこうして気持ちを書いて伝えてくれます。
鮮烈な色彩なのに、静かでどこかやさしい気配のするじょうたろうさんの作品。
さっちゃんの刺繍バッグとかずくんの和紙作品。ここちよい浮遊感を醸し出していました。
リズミカルな配色と線がなんとも楽しそう。
大きく呼吸しているような空間。
鮮やかさと朗らかさが魅力のきみえさん。真ん中の作品は今回のメインビジュアルとなりました。
自分の絵の前で、その場にいたお客さんとつむぎちゃんが出会って、一瞬でいいよと包み込む。
スカッと抜けるように気持ちよいおとくんの絵。
さちこさん、りんたくん、おとくん、それぞれのいろかたちが響き合う。
はじめての絵にと。赤ちゃんにとってはからだくらいの大きな絵、色と出会えたかな。
まんなかにはテーブル、再現したかったのはいつものアトリエ。
SHIKINOKATEAを飲んでいただきながら。
何を言わなくても自然と描きはじめる。
やえちゃんも描いて切って。
おばあちゃんも描く。すっとこころに入ってくる。
お一人おひとりのメッセージ、アトリエの作家と家族で大切に読ませていただきました。
カードは自分の絵の横にはりたいと、やえちゃん。
アトリエの光景をスライドで。音楽は菅間一徳さんの「you are my waltz」
菅間さんの音が空間に「自然であること」を添えて下さいました。
どれひとつとして同じものはないコースター
くろもじの枝と。アトリエの絵と野の植物はおなじ響きがします。
あかるくて、すこやかで、いたわりあって、おおらかで。
ごあいさつ。アトリエのはじまりはここにあります。
「楽しくね」ーこれは親友の晴子からもらった言葉。私が晴子とアトリエに出会ったのは2008年夏のことでした。世田谷の静かな住宅街にあったそこでは、晴子も含め一度に4,5人のダウン症の人たちが集まり、絵を描いたり、ものを作ったりしていました。そこは「教える」とは無縁の場で、笑いあったり、思い合ったりする優しい空気の中、陽が差し込むように絵がうまれるのでした。みんながリラックスしていて、誰ひとり無理はなく、それぞれが自分のリズムでいて響き合っている。それは美しい光景で、絵はこころに光が灯ったことを知らせる「ことば」でもありました。
島根に移住してからもあの数年が忘れられなかった私は、ご縁をいただき、アトリエを始めてみることにしました。後押しは、未来を予測するように描かれていた「島根仕事がんばってね」と「楽しくね」。そうしてこの地で出会った3人のダウン症の人たちと2016年春にはじまったのがAtelier Sunoiro ー今こうして作品をご覧いただくことができ、喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。
ダウン症の人たちの絵には、主張するのではなく、ただ在ることで目の前のひとりに合うなにかを伝える力があると感じます。それは共感力と受容力でつくられる、彼ら彼女らの世界に触れる時間でもあります。どうぞ絵の中に今のこころを委ねてみてください。お一人おひとりの内にある「なにか」と対話がはじまる、楽しい時間になれたらうれしいです。
この作品展へとつないで下さったのは、みゆき画材の田邊勝大さん。最初からまっさらな目で作品を見て下さり、よい絵だと変わらず励まし続けて下さいました。この場をお借りして深く感謝申し上げます。この小さな町で、偶然にも画材店を営む田邊さん、ダウン症の人たち、家族のように見守ってくれる人たちと出会い、ゆっくりとアトリエも育たせてもらっていること、うんと優しくていたずらだった晴子の計らいでしょう。
2023年10月21日 Atelier Sunoiro 栗山千尋
ごあいさつの冒頭にある、世田谷のアトリエとは、Atelier Element Present(アトリエ・エレマン・プレザン)です。現在は三重県で「一般社団法人ダウンズタウンプロジェクト」として活動されています。私の原風景としてこころにある尊い場所。8年前なにかに押し出されるようにしてはじまったSunoiroは、きっとあのElement Presentでの時間を再現したくて、やるようになっていたのだと今なら分かります。すべてを、分かるまで伝えてくれた、佐藤よし子さん、佐久間寛厚さん、エレマンプレザンで出会ったダウン症のみんな、ありがとうございました。
会場では、ダウン症の人たちが中心のSunoiroクラスとコドモクラスが混ざった、今のアトリエの光景を流していました。音楽は、菅間一徳さんの「you are my waltz」。この曲が入っている「waterside」というアルバムを知った時は、古民家の一角をお借りしてアトリエをはじめたばかりの頃。どんな状況でもこの音楽が寄り添ってくれました。4年ぶりの連絡にも関わらず、「どうぞお使いください」とこころよく言って下さり、ありがとうございました。いつか菅間さんが土を耕されている岩手の地へ伺いたいです。
それから、展示空間でゆっくりしていただけるよう、お茶とカップをご協力いただいたのは、俵種苗店の俵志保さん。アトリエの作品をラベルに使いたいと言って下さって、今年の1月にできたのがSHIKINOKATEAです。展示に合わせて、新しいラベルで新しいお茶をお届けできるように、くろもじ採取から仕上げまで行って下さいました。ありがとうございました。
もうひとつ、展示に間に合うように作って下さったものが、あやのさんのコースター。アトリエになくてはならないエプロンでお世話になっている、SUKIMONOの平下悟子さんと、いつか一緒にものをつくりたいねと話していたことが、かたちとなりました。作家のリズムを尊重し一緒に待って下さったからこそ。ありがとうございました。
そして、今回の作品展を主催して下さった、今井美術館学芸員の月森まりえさん、岡本佐紀子さん、石橋克彦さん。作品と共にアトリエという空間もまるごと感じていただきたいと、細部にわたって丁寧に、大きな力でご尽力いただきました。小さなアトリエに、眩しいほどの光をあてて下さって、ありがとうございました。
最後に、メッセージカードからいくつかご紹介させてください。
「アトリエは何だか入ったときから、こころがあたたかくなるような、そんな場所でした。作品にはいろんな色がつかってあり、それぞれの色が他の色を邪魔しておらず、なんだかこころがほっとしました。毎日があっというまに終わっていって、こころをやすめるような所がないけれど、ここはこころが休まる、そんなすてきな所でした。」
「いばしょがあるってすてきだなと思いました。ぼくもふでで絵をかきたくなりました」
「ここにいる間は、今ここにいる自分と向き合えた気がしました。」
あらためて、ダウン症の人たちのちからを感じています。みんなの絵はひとりを包み込んでしまうほどの、あかるい深さがあるのだと。
11月19日、最後のお客さまを見送った後のこと。展示室に戻ると、祈り終わった聖堂のような気配さえ感じ、思わず十字を切りました。来て下さった方たちそれぞれの思いが宿り、あらたに空間が生まれたのだと思います。サーカスのように儚いけれど、あれはたしかにあった生きた場所でした。
いただいた声を循環させていけるよう、来年も場を整えて、ひらいていきたいと思います。来て下さった方たちが自分は大切にされていると感じられる場所であるように。すでに与えてもらっているそれぞれの「素」に出会えるように。
Atelier Sunoiroに関わって下さった、すべてのみなさま、こころよりありがとうございました。
秋の作品展のお知らせです。
アトリエのある浜田市のお隣、江津市にある今井美術館で、「9つの素の色」展を開催しています。美術館は、山に抱かれた場所にあり、秋の心地よい風が吹いています。今日はのびやかに飛ぶ白鷺を見かけました。
会場には、アトリエのダウン症の人たちを中心とした9人の作家の約30点が展示されています。アトリエで生まれる彼らの作品は、こちらが理解しようと向かっていく必要はなくて、絵の方がその時々の私たちに向かってひらいてくれる不思議な力があると感じます。自然の景色を見るような感覚で、寛いでいただけたらうれしいです。
2023年6月11日(日)、江津市の江津本町では今年で19回目となる街歩き「ふらり」が開催されました。アトリエは2019年より旧江津郵便局での展示で参加させていただいています。毎年1日だけの展示でしたが、3回目となる今年は江津本町まちづくりの方々のご理解とご協力をいただき、14日(水)、15(木)とオープンいたしました。
約140年前、当時の建築士さんが神戸の教会をモデルに建てられたそうです。
美しい階段
建設当時、さぞ異国の風を運んできたことでしょう。
さちこさんの刺繍バッグが風にゆれてかわいくおっとりした雰囲気でした
かずまささんコーナー。色と建物が調和しています。右の作品はお茶のラベルになりました。
左はりんたさん。同じくお茶のラベルになりました。右はきみえさん。
おとさんのダイナミックな絵と、かずさんのギター。
アトリエでの制作風景をスライドショーで流しました。
左よりさちこさん、じょうたろうさん、おとさん。
おとさんのクレパス絵は、疾走感があり光と風によく合います。
色があふれる、あやのさん作。
「ふらり」は江津で大切にされているおまつり。この日のために中学生、高校生、大学生のみなさんが約80人も関わって下さっていたそうです。旧郵便局も含めて普段は人が入らない建物を事前にお掃除したり、当日も案内や取材、お客さまへの対応などきめ細かに動いてくれました。こうした準備があって、毎年気持ちよく安全に展示をさせていただけることにあらためて感謝でした。
今年は、アトリエの作品がラベルになっている SHIKINOKA TEA をいらした方に飲んでいただきました。旧郵便局は郵便局の機能を終えた後は、小学校の先生が住みピアノ教室を開かれていたたそうです。小さなキッチンとダイニングが今も大切に残っています。
お茶をのみながら、ひとときをくつろがれる様子に、時間がいつまでもあるようなゆったりした江津本町時間が流れていました。
絵の中でくつろがれる姿は、こちらもリラックスさせてもらいます。
くろもじのお茶とトラピストクッキー photo: ichi
本町で大正時代から続くどらやき屋の店主夫妻も。ご主人は油絵を描かれていたそうです。「絵はいいなあ、こころがあらわれるなあ」と。
「絵が寄り添ってくれる気がする」「すーっと入ってくる」今回何度も聞かせていただいた言葉です。ダウン症の人たちがアトリエで制作をするとき。描くことは、話すことや遊ぶこと、お茶することの同じ線上にある自然な行為です。頑張ってすることではなくて、リラックスしている中でうまれること。ちょうど光が差し込むような自然の摂理を私はいつも彼らの制作に感じています。
だからこそ、作品に出会う場もリラックスしたものでありたい。その思いが旧郵便局での展示につながっています。楽しかったり、嬉しかったり、さびしかったり、疲れていたり、こちらがどんな状態であろうと、ダウン症の人たちの絵はこちらのこころに添ってくれる。この3日間、みなさんにいただいた言葉やふるまいから、あらためて作品のちからを感じることができました。ありがとうございました。
来年もまた、作品とともにみなさんを出迎えることができますように。
今年も冷え込む12月、それぞれの場所で健やかに、あたたかくお過ごしでいらっしゃることでしょうか。2ヶ月ぶりの「日々のアトリエ」となってしまいました。ささやかな日々のアトリエの光景はこの春からはじめた、Instagramの方に綴っています。お時間ありましたら、のぞいてみていただけたら嬉しいです。
2021年もアトリエにご参加下さったみなさん、足をお運び下さったみなさん、遠くで近くでお気持ちを寄せて下さったみなさん、どうもありがとうございました。今年はアトリエの移転や、土曜コドモクラスのはじまり、津和野SHIKINOKAHSAでの作品展、数々のワークショップと今までにない流れの中にありました。小さなゆっくりのプライベートアトリエですが、同じ温度で響きあう方達とつながり、一緒に場をつくらせていただいたこと、何よりうれしかったです。
12月のクラスでりんたくんがふいに、「ちひろさん おけ(OK)」とただ一言マジックで書いてくれたことがありました。「わー、ありがとう」って言ったら、いひひひと笑って次は踊りはじめました。リラックスしていて、ユーモアがあって、一瞬でまるごとを「いいよ」と肯定し包み込んでしまう。
そんな力がダウン症の人たちにはあります。
彼らを通して見せてくれる「しるし」を線でつなぎ、星座を見つけるように世界をみることができたら、どんなにか楽園だろう。
世の中がどんな流れの中にあっても、アトリエの思いは6年前と変わりません。
小さくて、こころの通いあう、風が吹き抜ける場所であるように。
誰もが一人ひとり、野花のようにあるがままで美しいことを感じられる場所であるように。
これからもこの場所で見られる光を信じていこうと思います。
あたらしい1年がみなさまにとって、健やかで安心した時間でありますように。
Atelier Sunoiro 栗山千尋
10月2日(土)から10日(日)の9日間、津和野SHIKINOKASHAのオープンギャラリーでした。ずっと秋晴れで、強い光とからっとした風の中、空間と作品と来てくださった方たちが、やわらかくなじんでいくのを感じました。
今回オープンしたSHIKINOKASHAは、朽ちていく空き家に丁寧に手をかけられ、再びうまれた場所です。ギャラリースペースと、みんなが集える和室、お庭、それぞれがゆるやかにつながっていて、心地よい気が流れています。約2年の歳月を経て、生まれ変わった場所のお披露目の会。ギャラリーでは、はじまりの展示で、Atelier Sunoiroの作品展、夏のワークショップ作品の展示を行いました。
アトリエとしては2度目の作品展でしたが、あらためて、ダウン症の人たちの作品の調和する空気や、場にすっとなじみ、静かにすべてを包み込むようなおおらかさ、そして健やかさを感じました。それらは彼らの本来の在り方そのものです。「ひとつひとつは強い色彩があふれているのにやわらかく感じる。」「自然の風景をみているように気持ちいい。」「こちらが絵に向かうのではなくて、見ている私に寄り添ってくれた気がする。」「全体でひとつのような雰囲気がある。」「こんな風に無心に描けたらいいな、自由だな。」絵を目の前にした方たちからは、こんな声を聞かせていただきました。
そんな風に感じるのは、きっと私たちひとりひとりの中にも、ダウン症の人たちが本来もっているエッセンスがあるからだと思います。リラックスしていて、ユニークで、やさしくて、おだやかで、平和で。作品を通して、生まれたての私たちがもっていたものを呼び起こしてくれるから、絵と自分が響き合うのだと。
和室では、夏のワークショップ「わたしとキャンバス、みんなと和紙」に参加くださった方たちの作品展示です。ひとりひとりがユニークで、かけがえがなくて。夏を超えて、自分の描いた作品が飾られているのを見るのは、少しこそばゆいような、うれしいような。作品や和紙のかけらを見つけては「あったー!」という姿がまた、あたたかい場のひとかけらになっていました。
SHIKINOKASHAはじまりのおめでとうに、一緒に場をつくれたこと、ほんとうにうれしく思います。空間と作品と人と植物が響きあって、いつでも光がそそいでいるような9日間でした。お越しくださったみなさま、近くで、遠くで、見守ってくださったみなさま、どうもありがとうございました。
SHIKINOKASHA 2021.10.2-10
この夏の間、2回にわたって津和野のギャラリー、SHIKINOKASHAさんと一緒にワークショップを行いました。小さいお子さんから大人の方まで、ひとつのテーブルで同じ時間、同じ素材を共有しながら一緒に絵を描いていきます。友達と、家族と、はじめましての人たちと。参加してくださった方々の触れる、感じる、描いてみる姿と、庭の植物たちの佇まいが響きあって、新しい場所に息吹がめぐっていった気がしました。
「わたしとキャンバス、みんなと和紙」時間のひとかけらをお伝えすることができたら嬉しいです。
どんな風に描いてもいい。筆は使わずに手だけで世界をつくっていく。
色と親しむ。
お母さんの膝の上で筆をにぎる。色がまじってゆく不思議。
久しぶりに絵を描いた喜びが伝わるかのよう。
お父さんの膝の上で筆をにぎる。ゆっくりと筆を動かしてみる。
キャンバスに描いた後は、和紙のかけらに水彩絵具をのせてゆく。
和紙ならではの色のにじみ。水と色が心地よくからだに入っていくよう。
強めの色も和紙ではやわらかい感じに。
ひとりひとりのかけらを貼り合わせて、「みんなと和紙」になっていく。
てらいのない色と形が重なり合って響くうつくしさ。
ワークショップにご参加いただいた皆さんの作品は、10月2日(土)ー10日(日)のSHIKINOKASHAオープンギャラリーで展示をします。加えて、Ateler Sunoiroのダウン症の人たちの作品も同時に展示予定です。光と緑を包んだまっさらな空間に、色彩と温度が加わって、どんな光景が見られることだろう。アトリエとしては2年ぶりの作品展示になります。ダウン症の人たちのもつ調和で平和な雰囲気を感じてリラックスしていただける空間をイメージして、準備を進めていきたいと思います。
SHIKINOKASHA |シキノカシャ
オープンギャラリー 2021年10月2日(土)-10(日)
時間 10:30-18:00(入場は17:30まで)
場所 〒699-5605島根県鹿足郡津和野町後田ロ-590
お問合せ0856-72-0244(代) / info@shikinoka.jp
朝夕の蝉やひぐらしの声がにぎやかになってきました。それぞれの場所で健やかにお過ごしのことでしょうか。
今週、7月13日と15日、毎日新聞にアトリエのことを掲載していただきました。丁寧に真摯に取材してくださったのは、毎日新聞記者の萱原健一さん。ギターで青葉市子を弾かれるという、こころを大事にされている方でした。おおらかでやさしい言葉をありがとうございました。
下記のURLから途中までお読みいただけます。覗いてみていただけたらうれしいです。
障害と芸術~言葉を超えて/5 素の色を出せるアトリエ 自分のリズムで絵を描く/島根
https://mainichi.jp/articles/20210713/ddl/k32/040/317000c
障害と芸術~言葉を超えて/6 ありのままで 救いとなる場所の伴走者/島根
https://mainichi.jp/articles/20210715/ddl/k32/040/423000c
#毎日新聞 #ニュース
春のオープンアトリエが終わって3ヶ月半。あれよあれよという間に梅雨を越え夏を迎えました。アトリエに通うダウン症の人たちやこどもたちにはアトリエのお引っ越しという環境の変化でしたが、この3ヶ月半ですっかり新しい場に馴染んでいます。彼らのOKが聞けたら間違ってない証拠。気に入ってくれてほっと一安心です。
ひとつ夏のお知らせです。7月22日、津和野のSHIKINOKASHAにてワークショップを行います。オーナーの俵志保さんと出会って、ギャラリーを作る話を聞いたのが去年の10月。出会った時からごく自然に響きあい、Ateleir Sunoiroの作品でオープニングの展示をしようとイメージが膨らんでいきました。
打ち合わせでは7月22日、展示の初日でワークショップをする予定でした。でもまだ世の情勢の不安が落ち着かないことから、ゆっくり焦らず、秋頃にみなさんにご覧いただけるよう、整えようということになりました。展示までの7〜9月の間、月に一度ワークショップを行いながら、参加者のみなさんの作品でゆるやかに空間が変化していく予定です。変わっていく光景を一緒に体感することができたらうれしいです。夏を超えて、秋を迎えた頃、アトリエの作品と参加者のみなさんの作品が響き合う光景を想っています。
ART WORK SHOP ♯001「わたしとキャンバス」「みんなと和紙」
@ateliersunoiro × @shikinokasha
お問い合わせ、お申し込みは下記まで
■お問合せ
info@shikinoka.jp
FB / Instagram DM
0856-72-0244
俵種苗店SHIKINOKA
■お申し込みフォーム
https://forms.gle/vS4xr2HuJqfr58tT6
遅咲きの最後の桜が風に舞って、山々のみどりがにぎやかな季節になりました。日々新しくなろうとする自然のリズムに圧倒される日々です。
春のオープンアトリエ、おかげさまでたくさんの方々にお越しいただき、1週間を無事に終えることができました。それぞれの場所から「おめでとう」を届けていただき、とっても嬉しかったです。来て下さった方々、思いを寄せて下さった方々の気持ちが満ちて、やさしく、あたたかな場となりました。あらためて、感謝申し上げます。ありがとうございました。
アトリエで見られたひとつひとつの光景。一人ひとりのこころからうまれた小さな物語。嘘がないあるがままの姿。今までもこれからも大切にしていきたいことをあらためて教えていただいた気がします。ダウン症の人たちが心地よく過ごせる環境は、そうでない子どもや大人にとっても過ごしやすい環境で、その中で耳をすませ、眼差しをむけてみれば、どこまでもやさしい世界があります。
自分のこころが大切にされていると感じられるように。一人ひとりのささやかな物語こそが生きている喜びだと感じられるように。光のようなたしかな感覚を信じて、新たな場で月日を積み重ねていきたいと思います。
オープンアトリエ中見せてもらった、数え切れないシーンのほんのひとかけらですが、少しでも雰囲気を感じていただけたら嬉しいです。
期間中見守ってくれていたのは、ダウン症のかずくん、おとくんの作品と、山の植物のブーケ。あるがままの姿が響きあう。
いろいろ考えたけれど、「とにかくやってみよー」手が動き、感じ始める。
「裏にはチューリップを描こう、表には桜を描こう」
「わー、光に透かしたら土から生えてるみたい。」
花瓶に生けられた桜を見て、「桜はピンクじゃなかった、花びらは白」と。
わたしがすきないろにぬった。
てんてんてん、まるまるまる。
しゅっしゅっしゅっ、春の風。姉妹で響き合う。
「かお、かけるよ」
ここにもかお。
散っていた花びらをのせてみる。即興で手が動く。
桜ってどんなだったけな、下から見てみよう。
それぞれの青。響き合う。
透かしてみれば。
こどもと。おとなと。
キャンバスの裏も画面。自分だけのみどりをつくる。
表はこう。
わたしのいろ。
「ぼくは青がいちばんすき」
虹に手形を重ねあわせる。光のような。
お父さんと絵の具でおいかけっこ。
表も裏もない、まっさら。
おかあさんも描きたくなって。
普段は選ばないような色をあえてつかってみる。
クレヨンを何層にも重ねていく。身近な海の景色。
寝っ転がって描くのは気持ちがいいね。
宇宙、星、
童話の挿絵のような。自然の景色。
クレヨンの上に絵の具を重ねて布でこする。あっという間にできた。
キャンバスだけじゃ足りなくて。描きたいように描く。
おとなの静かな時間、じっくりと自分のリズムをきざんでいく。
キャンバスに今日の春をすくいとる。
その場に居合わせた2人が交じり合っていく。私の絵が2人の絵になっていく。
「なにいろがいいかなー」「そうだねぇ」やさしいかけ合い。
はじめての絵の具。てらいのない色使い。
女の子が残していってくれた絵のことば。
アトリエは先週から通常クラスがスタートしています。いつものメンバー、りんたくん、おとくん、かずまさくん、さちこさん、じょうたろうくんもそれぞれ新しい場所にすっと心地よくなじんでいて、「あれ、ずっと前からこうしていたっけ?」と感じるほどです。新しい場所に来たコドモクラスのみんなも、のびのびした気持ちで制作をしています。新しい場所を気に入ってくれてほっと一安心です。ほっとしすぎて通り過ぎていましたが、4月12日でアトリエも6年目を迎えました。5月からは土曜日の午前と午後、コドモクラスを新たにはじめる予定です。クラスの詳細は追ってご案内いたします。
またここからどんな景色が見られるのだろう、私自身もまっさらな気持ちで場を整えていきたいと思います。Atelier Sunoiro、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
春のオープンアトリエのお知らせです。
背景に使わせてもらった作品は、コドモクラスのあおいちゃんの絵画です。まだ凍える寒い2月、「きょうははるのいろをつかいまーす!」と12色を選んで一気に描き上げました。吹き抜ける風や桜の息吹き、春のみずみずしさを感じさせてくれます。自然のリズムをからだとこころで受け取っているからこそ、先取りして表現ができるのだなあと思います。
土手の桜のつぼみもふくらんできました。新しいアトリエでみなさんのお越しをお待ちしております!
すっかりご無沙汰してしまいました。季節もゆらぎながら変わっていく中、みなさんそれぞれの場所で健やかにお過ごしのことでしょうか。
この春、アトリエは美川という地域へお引っ越しいたします。今の所から車で15分ほどの山あいのところです。一足先に住んでいますが、周布川のゆったりした風が流れ、暮らす人たちのあたたかさが感じられる、心地よい場所です。
Atelier Sunoiroは5年前、3人のダウン症の人たちと一緒にはじまりました。ゆっくりと年月を重ねるにつれ、ダウン症でないお子さんやおとなの方にとっても大事な場に育っていたことに、今気付かせてもらっています。
誰にとっても、自分のこころが大切にされていると感じられるところ。自分のリズムで表現ができるところ。新しい場所が、「いつでもここで待ってるよ」と灯火のようであれたらと思います。
今のアトリエは3月20日(土)が最終日となります。ご見学はクラス以外の時間で対応させていただきます。ご希望の方はお早めにご連絡ください。
お引っ越し後は早速、3月27日(土)から1週間、春のオープンアトリエを行う予定です。普段アトリエに参加されていない方でも、どなたでもご参加いただけます。その頃は土手の桜が見頃なことでしょう、お散歩がてらに足をお運びいただけたら嬉しいです。
オープンアトリエの詳細は追ってお知らせいたします!
最終日の20日まで、残りわずかになってきました。今日はかずまさくんのここでの最後の制作。一回ずつを丁寧に愛しんでいくアトリエ時間です。
島根県浜田市の議会だより(11月1日発行分)の表紙に、アトリエ作品写真の協力をさせていただきました。
深呼吸したくなるようなゆったりとした雰囲気をまとうこの作品は、かずまささんの作品です。石州和紙にアクリル絵の具で描かれています。青、薄青、黄、緑、オレンジ。知っているはずの色が、かずまささんの心と手を通ると魔法がかったように清々しく感じられます。あらためて色そのものと出会わせてくれてるようです。色と色とが隣り合う、あわいにうまれる線の美しさが、波打ち際のような、夕日のにじむ地平線のような、自然のリズムをも感じさせてくれる作品です。
浜田市にお住いの皆さんの元に必ず届く、議会からのお便り。ダウン症の人たちの作品が、こうしてまちの人たちと議会をつなぐ点になれたこと、嬉しく思います。私たちの暮らしにつながる最初のページを開く時、ふっとリラックスした気分を感じていただけたらなお嬉しいです。冬の足音が近づいてきました、ゆっくりとあたたまりながら、ご覧になってみてください。
風にそよぐ黄金色の田んぼに、たくさんの真っ赤な彼岸花が見られる季節となりました。
みなさんお変わりありませんか?アトリエに通うみんなも元気です。
先日、島根県益田市と東京都渋谷区に拠点を置くデザイン会社、益田工房さんを訪ねてきました。少し緊張しながらアトリエの作品2点を持って。
この4年間ひそかに、アトリエのダウン症の人たちの作品が、ホテルやオフィスや病院にあったらいいなあと思いをあたためてきました。そしてその場所はアトリエのある浜田市を中心に、通っている人たちの住む町や、つながる土地でありたいと。
アトリエでの彼らは、描きたいという強い欲望や、描かなきゃという焦燥とは無縁です。紙と絵の具があるな、じゃあ描こうかなというなんとも健康的な素の姿で制作をしています。そうした余白を持って、リラックスしている中から生まれた作品が、町に暮らす人が憩う場、はたらく場、ケアされる場にそっと寄り添うようにあるのが自然なあり方だと感じてきました。
作品と空間とが互いに響きあえるのを思い描いていたところ、益田工房の洪さんと出会い、はじめの一歩でご相談をしたらば、作品を見にアトリエまで来て下さり、とんとんと決まったのが今回持っていった2点の作品です。それは偶然にも益田市から通っているじょうさんの作品でした。
じょうさんはダウン症ではありませんが、朗らかで大らかな性質と、本質をつく鋭さとがあり、言葉ではないコミュニケーションの中で大事な気持ちを共有しながら制作をしています。彼が暮らす町のデザイン会社に作品がある光景。それは小さな一歩ですが、光のようにたしかな感覚でした。
オフィスのある2階のドアを開けると、小さなギャラリーのような空間があります。今回はその壁に展示させていただきました。ギャラリースペースとオフィスは壁一枚を隔ててつながっていて、アーチ型の大きな窓の向こうに撮影スペースが見えます。天井が高いオフィスは工場のようで、ここで人と思いと素材とが交わって、結晶のようなデザインが生まれているのですね。
デザインのお仕事に携わる方たち、このスペースに足を運ばれる方たちの、ふっとした瞬間に、目や心にとまり、寄り添えますようにと願いながら過ごしたひと時でした。
展示の機会を下さった益田工房の洪さん、お仕事の手をとめて展示をお手伝いして下さった八谷さん、スタッフのみなさん、どうもありがとうございました。
photo: yatagai yoshiyuki
益田工房: https://masudakohboh.com/
6月に入り、夏の日差しが感じられるようになりました。みなさま、それぞれの場所で、健やかにお過ごしのことでしょうか。
お休みをしていたアトリエも6月から再開しました。初日はコドモクラスから。久しぶりの笑顔に「おかえり」という言葉が自然とこぼれました。
この期間、保護者の方たちも、それぞれの場所で不安な思いを抱え、守るべきものを守ってこられたことと思います。こどもたちも慣れないマスクをずっと着けて、限られた環境の中で我慢をしてきたことでしょう。
どんな思いで今ここにいるのか、顔をみたら分かりあえる。久しぶりの再会に多くの言葉は必要ありませんでした。
暮らしの中に「オンライン」が飛び込んで来て、距離をとったままでも「できる」世界を体感しました。オンラインだからこその出会いや学び、触れられるものがあるのだと気づきがありました。一方、アトリエの時間はオンラインではどうしても難しいところがあります。アトリエで大切にしているのは、相手が感じていることに寄り添って、表現を汲み取って、その人だけの世界を一緒に見るということです。そのためには一緒にものを見て、目を合わせて、手と素材に触れて、息づかいを感じて、偶然を楽しみながら、寄り添うことが必要です。同じ空間で同じ空気を吸っていないとできないことなのです。
どうかみんなが無事でありますように、また場を共有できますようにと願いながら、アトリエに風を通し、積み重なった時間の感触を確かめるような日々でした。
今週は天気がよく、アトリエにも心地よい風が吹き抜けています。風に頬をなでられるような、ふっと力が抜けるような感覚を少しでも感じていただけたら嬉しいです。
新しい筆と絵の具の瓶で気持ちいい。イーゼルで描くのも気分が変わって気持ちいいね。
空におばけがあらわれる、そうです。
なんとも堂々とした山です。
今どうしたら気持ちいいかをよく分かっている。リラックス上手。
りんたくんが先生になります。5時間目の「がっかつ」が絵を描く時間で、6時間目は「おやつ」。
庭でカラスの鳴き声にこたえて叫んでみる。
気持ちがよいので踊ってみる。
音楽が聞こえてきたからギターをつまびいてみる。周りのできごとに共感していく、りんたくんの世界。
ゆっくりゆっくりのリズムで長く集中しながら絵を描いていく。やっちゃんの時間の流れ。
長い廊下にぽつぽつと作品を残していく。
弦をひくと、カマキリの歩く音、夜のくまの足音、風の音が聞こえるそうです。
建物、駐車場、ビル、木、車。ぼくの街ができあがっていく。未完成だけれども早く遊びたくて抱えて帰りました。
描きたいものを描きたいように描く。手がすらすらと動く。シンプルで難しいことがさらっと起こります。
保護者も一緒にくつろいで帰られます。「ここに吹く風は気持ちいいいね」と。
アトリエでダウン症の人やこどもたちと一緒に過ごしていると、彼らは今何が自分にとって心地いいのか、どうしたら気持ちいいのか、よく分かっていると感じます。何より自分の感覚に忠実、リラックス上手です。思考よりも感覚を、正しさよりも自然さを、からだで選んでいるからだと思います。不安や心配さが身近にあるときほど、その感覚はおぼろげになっていくような気がします。アトリエでの彼らは、からだの感覚が確かなことを、自分らしさを取り戻す健やかなやり方を、主張するわけでもなく、ただそう在ることで伝えてくれているようです。心地よさ、美しさへの案内人です。
アトリエには座右の銘にしている言葉があります。「楽しくね」、ダウン症のハルコさんがかつてよく書いていた言葉です。調和・平和の性質で生きている彼らの言葉は本質をついていて、いつでも思い出して、世界は心地よいことを思い出させてくれます。難しく考えて苦しくなりそうな時は、「楽しくね」とおまじないのように唱えると効果抜群です。楽しいは感じること。迷った時は感覚で気持ちいい方を選んでいたら、間違いはなさそうです。そんなふっと力が抜けるような、やさしくなれるような、ダウン症の人たちの感覚を少しでも感じていただけたら嬉しいです。
おだやかな笑顔のサチコさん。
制作に入ると静かに勢いづく。「いいねー」と自分で確かめるようにつぶやきながら筆はすすみます。
今日もカズくんのリズム。和紙のやわらかさとかずくんの穏やかさが響き合う。
どうしてこんなにきれいな色が出せるのだろう
冬のレモンを手のひらの中で確かめる。
堂々としたレモンのスケッチ
リンタくんの最近のテーマは車。
もちろんお仕事をしている。「もしもし」「はーい、かしこまりました」
カズくんのギターで熱唱
制作のあとのリラックスタイム。
愛くるしいヤエちゃん。
おやつを食べてもなにをしてても楽しい
見慣れたストローがオブジェに変わっていく。
今日も、楽しくね。