9つの素の色
寒いような、暖かいような、ゆらぐ12月、みなさまそれぞれの場所でお元気でお過ごしでしょうか。今井美術館での「Atelier Sunoiroー9つの素の色」この秋、1ヶ月の会期を無事に終えることができました。たくさんの方にお越しいただき、遠くから、近くから、お気持ちを寄せていただきました。こころより感謝申しげます。展示が終わって1ヶ月の月日が経ち、ようやく落ちついて綴ることができました。お越しくださった方には、思い出す時間に、お気持ちを寄せてくださった方には、少しの間、旅する時となれたらうれしいです。
展示前日のアトリエ、大切な2つのカードも一緒に会場に置くことにしました。
「ひかりがあふれるようね」フランス在住の画家の方が残して下さったことば。
かずくんのギターとSMAP3部作、じょうたろうさん、あやのさんの絵。調和。
アトリエではいつもこどもたちが遊んでいるギターもここではかしこまって。
詩のようなかずくんのことば。
絵の後はこうして気持ちを書いて伝えてくれます。
鮮烈な色彩なのに、静かでどこかやさしい気配のするじょうたろうさんの作品。
さっちゃんの刺繍バッグとかずくんの和紙作品。ここちよい浮遊感を醸し出していました。
リズミカルな配色と線がなんとも楽しそう。
大きく呼吸しているような空間。
鮮やかさと朗らかさが魅力のきみえさん。真ん中の作品は今回のメインビジュアルとなりました。
自分の絵の前で、その場にいたお客さんとつむぎちゃんが出会って、一瞬でいいよと包み込む。
スカッと抜けるように気持ちよいおとくんの絵。
さちこさん、りんたくん、おとくん、それぞれのいろかたちが響き合う。
はじめての絵にと。赤ちゃんにとってはからだくらいの大きな絵、色と出会えたかな。
まんなかにはテーブル、再現したかったのはいつものアトリエ。
SHIKINOKATEAを飲んでいただきながら。
何を言わなくても自然と描きはじめる。
やえちゃんも描いて切って。
おばあちゃんも描く。すっとこころに入ってくる。
お一人おひとりのメッセージ、アトリエの作家と家族で大切に読ませていただきました。
カードは自分の絵の横にはりたいと、やえちゃん。
アトリエの光景をスライドで。音楽は菅間一徳さんの「you are my waltz」
菅間さんの音が空間に「自然であること」を添えて下さいました。
どれひとつとして同じものはないコースター
くろもじの枝と。アトリエの絵と野の植物はおなじ響きがします。
あかるくて、すこやかで、いたわりあって、おおらかで。
ごあいさつ。アトリエのはじまりはここにあります。
ごあいさつの冒頭にある、世田谷のアトリエとは、Atelier Element Present(アトリエ・エレマン・プレザン)です。現在は三重県で「一般社団法人ダウンズタウンプロジェクト」として活動されています。私の原風景としてこころにある尊い場所。8年前なにかに押し出されるようにしてはじまったSunoiroは、きっとあのElement Presentでの時間を再現したくて、やるようになっていたのだと今なら分かります。すべてを、分かるまで伝えてくれた、佐藤よし子さん、佐久間寛厚さん、エレマンプレザンで出会ったダウン症のみんな、ありがとうございました。
会場では、ダウン症の人たちが中心のSunoiroクラスとコドモクラスが混ざった、今のアトリエの光景を流していました。音楽は、菅間一徳さんの「you are my waltz」。この曲が入っている「waterside」というアルバムを知った時は、古民家の一角をお借りしてアトリエをはじめたばかりの頃。どんな状況でもこの音楽が寄り添ってくれました。4年ぶりの連絡にも関わらず、「どうぞお使いください」とこころよく言って下さり、ありがとうございました。いつか菅間さんが土を耕されている岩手の地へ伺いたいです。
それから、展示空間でゆっくりしていただけるよう、お茶とカップをご協力いただいたのは、俵種苗店の俵志保さん。アトリエの作品をラベルに使いたいと言って下さって、今年の1月にできたのがSHIKINOKATEAです。展示に合わせて、新しいラベルで新しいお茶をお届けできるように、くろもじ採取から仕上げまで行って下さいました。ありがとうございました。
もうひとつ、展示に間に合うように作って下さったものが、あやのさんのコースター。アトリエになくてはならないエプロンでお世話になっている、SUKIMONOの平下悟子さんと、いつか一緒にものをつくりたいねと話していたことが、かたちとなりました。作家のリズムを尊重し一緒に待って下さったからこそ。ありがとうございました。
そして、今回の作品展を主催して下さった、今井美術館学芸員の月森まりえさん、岡本佐紀子さん、石橋克彦さん。作品と共にアトリエという空間もまるごと感じていただきたいと、細部にわたって丁寧に、大きな力でご尽力いただきました。小さなアトリエに、眩しいほどの光をあてて下さって、ありがとうございました。
最後に、メッセージカードからいくつかご紹介させてください。
「アトリエは何だか入ったときから、こころがあたたかくなるような、そんな場所でした。作品にはいろんな色がつかってあり、それぞれの色が他の色を邪魔しておらず、なんだかこころがほっとしました。毎日があっというまに終わっていって、こころをやすめるような所がないけれど、ここはこころが休まる、そんなすてきな所でした。」
「いばしょがあるってすてきだなと思いました。ぼくもふでで絵をかきたくなりました」
「ここにいる間は、今ここにいる自分と向き合えた気がしました。」
あらためて、ダウン症の人たちのちからを感じています。みんなの絵はひとりを包み込んでしまうほどの、あかるい深さがあるのだと。
11月19日、最後のお客さまを見送った後のこと。展示室に戻ると、祈り終わった聖堂のような気配さえ感じ、思わず十字を切りました。来て下さった方たちそれぞれの思いが宿り、あらたに空間が生まれたのだと思います。サーカスのように儚いけれど、あれはたしかにあった生きた場所でした。
いただいた声を循環させていけるよう、来年も場を整えて、ひらいていきたいと思います。来て下さった方たちが自分は大切にされていると感じられる場所であるように。すでに与えてもらっているそれぞれの「素」に出会えるように。
Atelier Sunoiroに関わって下さった、すべてのみなさま、こころよりありがとうございました。